少し後にZ世代に必要なのは「マクロス7」なのではと考える

(2021年10月)

 最近のZ世代に流行りのアニメや小説を見ますと、なんだか「しっかり自分なりに仲間たちと生きて、そして死ぬ」というテーマのものが多い気がしまして、ようやくY世代がエヴァンゲリオン以降に陥っていた「先代からの負債で鬱になる」というコンテンツからメインが完全に移行したのかなぁ、と思っている次第です。(鬱コンテンツの最後っ屁が「閃光のハサウェイ」になるんですかね?楽しみw) そのエヴァンゲリオンが登場する少し前、我々X世代をメインとした層(の一部)が熱狂したアニメがありまして、それが今回話そうと思う「マクロス7」です。

 

 このアニメ、私は高校生の時に生で見てまして(しかもこの番組、日曜の午前中放送wそりゃ友達いないww)、マクロスシリーズの構造を使いつつ、その中での常識を完全にぶち壊した本作は、初代マクロスのストーリーがあんまり好きでなかった(でもバルキリーのデザインは大好きな)自分にはものすごくぶっ刺さってしまった作品です。

 

 マクロスシリーズのお約束といえば「変形する飛行機ロボット」「歌」「恋の三角関係」なのですが、この作品、一応この3つの要素があるにはあるのですが、はっきり言ってメインストーリーにかかわっているのは「歌」だけで、さらにメインテーマが「本物のアート・アーティストとはなにか?」というとんでもない内容です。後で知ったのですが、よくアーティストがするエキセントリックな行動を理由も含めてしっかりと描写する必要があるので、下手に普通の視聴者が作品に触発されるととんでもないことになる、との心配から、作者側が意図的に漫画チックな演出(ドラゴンボールみたいな演出、と言えばわかりやすいかな?)をすることでわざわざ角を削ってリアリティを薄めたというほどのものです。

 (余談ですが、「恋の三角関係」がほぼストーリーに関係なくて影が薄い理由は、おそらくマクロス7のヒロインがミレーヌじゃなくてシビルだからですよね。バサラとガムリンとシビルの、別に恋の三角関係でない3人の物語が柱なので、だからOPでガムリンとバサラがすれ違うシーンに花束の少女(=声優がシビルと同じ人)がいるんでしょ?)

 

 この作品が伝えたいことは、作品を全部見ずともおそらく主題歌の「SEVENTH MOON」と最終回にかかる「TRY AGAIN」を聞けば大体わかると思います(もし時間があれば「POWER TO THE DREAM」も聞いて欲しい…)。人間から「スピリチア」(←この用語の暗喩がすでにいろいろやばい)を奪い生きる希望をなくさせる敵と、その希望をなくした人達を歌により蘇らせる主人公、というストーリー展開で、「本当に心揺さぶるアートというものは、人の心の奥底から生命力を湧き出させてくれるものだ」、ということ表現したのに加え、ただただ最高の歌を歌うことを目指す主人公の(かなりぶっとんだ)アーティストとしてのビルディングスロマンを表現した内容は、最後の敵を倒すのではなく、感動させることで戦いを終わらせる、というところも含めて、それまでになかった空前絶後のアニメ作品でした。この作品に心打たれて、生きる希望を持った人も多いと思います。(後で知った話ですが、東日本大震災の直後、東北地方のラジオ局が上記の「TRY AGAIN」を流したそうです。センス良すぎです。)

 

 我々X世代(の一部)は、この作品と歌に力をもらい、なんとか現実と対峙しながら生きてきました。Z世代の人たちも、おそらく今しばらくは近い仲間たちとの幸せな関係性を求める日々が続くと思いますが、おそらくもう少し後に、生きていく上で無気力になることがあると思います。その時にぜひ、この作品を見てもらえればと思います。

 

 (というかですね、この雑感を抱いたのは2021年9月なのですが、実はマクロス7を思い出した理由は、10月から放送される「MUTEKING THE Dancing HERO」が、まさに「マクロス7」的な作品なんじゃないかなー、と、予想したのですよ…いやーしかし、あの髙橋監督が今の時代にどんな作品を作ろうと思っているのかすごく気になります。)

 (※後日追記ですが…ムテキング、3話まで我慢して見たのですが、どうも違いそうですねぇ…がっくりですよ、髙橋監督…。)

 

 で、ここまでX世代とZ世代について話をしてしまい、Y世代をおざなりにしてしまいましたが、Y世代にも希望をもたらす作品はあると思います。エヴァンゲリオンには少し突き放されてしまった感があるかも知れませんが、最近放送した「ゲッターロボ アーク」こそ、今Y世代が見るべき作品でしょう。

 

 「お前たちが答えを出すんだ。つらい運命だとしても、立ち向かうことができるのが、若者であるお前たちの特権なのだ。 ゲッターの申し子たちよ…恥をかくんじゃないぞ…」

 ゲッターロボ アーク 第13話より抜粋