大河ドラマと「平家物語」が面白いと考える (2022年2月)

 私、大河ドラマが昔から大好きでして、毎年楽しみにしています。というか、楽しみにしていました、というほうが正しいかも知れません。といいますのは、これは個人の趣向なのでどうにもなりませんが、私は最近あまりない泥臭い大河ドラマが大好きなので、世間で評判の良い「篤姫」はまったく好きになれなかったですし、「麒麟が来る」も、服装の色ばかり気にかかり全く話に入れませんでした。で、新しく始まりました「鎌倉殿の13人」ですが、うーん惜しいなー、という感じです。

 

 今回の脚本は三谷幸喜氏とのことで、「真田丸」のような大河ドラマになるのかなぁ、と心配していたのですが、やはり真田丸かなぁ、という印象です。三谷氏の大河は、私は「新選組!」は全部見まして、非常に面白いカウンター大河ドラマ、かつホームドラマと相性の良い題材だなぁ、と思って楽しく見れました。ここで「カウンター大河ドラマ」なのですが、これは私が勝手に定義しているものなのですが、「イメージが定着してしまっているような題材に対して、それをひっくり返すような大河」を意味しています。三谷氏の新選組は、(特に近藤勇なのですが)、新選組に対して大部分の人たちが抱いている凝り固まったイメージをひっくり返すようなキャラクター設定と脚本にしているにもかかわらず、歴史の流れをきちんと説明している内容になっており、重箱の隅をつつけばいろいろ変なところはありますが、面白いホームドラマ大河として成立していたと思います。一方、真田丸はどうだったかと言いますと、おそらく三谷氏は真田丸を「真田太平記(1985年放送のNHK時代劇)」のカウンター大河ドラマとして出したのではないかと思います。でも、真田幸村およびその一族に対して、凝り固まったイメージって、あんまりないですよね?さらに、新選組が、主として個人的な関係が物語の主軸なのに対し、真田丸は政治が主たる物語の軸なので、ホームドラマと相性があまり良くなかった気がします。そのため、どうにもストーリー展開がちぐはぐで、重箱のすみのおかしい部分が非常に気になるような内容になってしまったような印象です。

 

 おそらくなのですが、三谷氏が目指したのはホームドラマ大河、かつカウンター大河の金字塔「葵 徳川三代」なのだと思います。この大河、見てもらえればわかりますが、徳川三代という凝り固まったイメージを壊し、かつホームドラマ的でありながら歴史や政治を魅力的に見せる工夫がふんだんに使われている(特に狂言回しとしての中村梅雀さんは凄まじいです)、とんでもない良作で、これを真田一族でやりたかったのだろうな、と思います。さて、鎌倉殿はどこに向かうのか、しばらく様子を見ようと思います。

 

 カウンター大河の良作は徳川三代の他、「平清盛」「信長 KING OF ZIPANGU」があったなあ、と思いながら、平清盛で思い出したのですが、フジテレビ系列で放送中のアニメ「平家物語」はすごいです。今アニメはこれしか見てません。これ、おそらく「今の日本って、平家物語の平家と同じじゃない?でも、その平家の中にも尊い人達はいたんだよ。そしてどんなに尊い人たちがいたとしても、時代の流れに逆らうのは難しいんだよ。」ということを真正面に伝えようとしているのではないかなぁ、と思います。そしてこのアニメ、よく見ると今流行りの「異世界転生モノ」に対する痛烈なカウンターになっています(やっぱりカウンターっていのうはこういう風にやらないとダメだよなぁ・・・素晴らしい)。なのでたぶん若者には全く受けないアニメでしょうけれども、応援してます。